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クローズアップ現代「追跡!ネット広告の闇 水増しインフルエンサー」



テスト的にNHKサイト (クローズアップ現代)から部分コピーしたものです。

正しくはNHKオリジナルサイトにて閲覧ください。



2019年5月22日(水)
追跡!ネット広告の闇 水増しインフルエンサー

追跡!ネット広告の闇 水増しインフルエンサー

今年、テレビを抜いて広告の王者になることが確実なネット広告の闇に迫るシリーズの第3弾。今回深く掘り下げるのは、インスタグラムなどSNSの口コミ広告だ。「同世代の身近なインフルエンサーの感想の方がリアルで信頼できる」と考える若い消費者を取り込もうと、多くの企業が導入している。しかし、そのインフルエンサーの価値基準であるフォロワー数が、水増しされているケースが少なくないことがわかった。化粧品や健康食品のPRを行うインフルエンサーのある女性は、かつてフォロワーを千人購入したと証言。広告と明示しない「ステルス・マーケティング」を行う事例もあるという。番組では、売買されたフォロワー3万人を徹底追跡。そのカラクリに迫る。SNSを舞台に成長著しいインフルエンサー・マーケティング、健全化するには何が必要なのか。

出演者

  • 石井光太さん (作家)
  • 宮田裕章さん (慶應義塾大学教授)
  • NHK記者
  • 武田真一 (キャスター) 、 高山哲哉 (アナウンサー)

ネット広告の闇 水増しインフルエンサー

(若者の声)
「今どきグーグル使っているのは…。」
「グーグルはない。」
「ごはん屋さん探すときに、インスタグラムで調べる。」
「口コミだと、CMより伝わってくる。」
インスタグラムの口コミ。若い世代を席けんしています。
「フォロワー多い人の方が、影響力大きいのかな?って。」
「(フォロワー)多い方が信用できるというか、マネしたくなる。」
フォロワー数=影響力。しかし…。
読者モデル
「(フォロワー)1万人を6,000円で買いました。3か月ごとに買ってます。先輩たちがやっているので、有名な方も。」

この女性が紹介した健康食品は、痩せるとうたうなど、不当な表示をしていたとして行政処分を受けました。
フォロワーの販売業者
「注文が来たら納品させてもらってます。1億人とかいけますね。今の時代で言うと、数があれば正義。」

売買された3万人のフォロワーを徹底追跡。たどり着いたのは、地球の反対側。
取材班
「ジロー・シブヤを知っていますか?」
「いや、聞いたこともない。何か…盗まれている感じだ。」
今や広告の主戦場とも言われるSNS。その熱狂の舞台裏で何が起きているのでしょうか。

稼ぐインフルエンサー! ネット広告の舞台裏

武田:インスタグラムを使った広告の全てが怪しいわけではありません。例えばこちら、3人の子どもを育てる主婦が発信するインスタグラムでフォロワー数、23万人。こうした口コミの影響力が大きい人は、「インフルエンサー」と呼ばれて注目を集めています。この方が投稿しているのは、洋服のコーディネート写真です。
この一部は、実はアパレルメーカーから報酬をもらって商品の宣伝をしているものなんです。
身近に感じられるインフルエンサーのお薦めは、テレビCMなどとは違う「口コミ広告」として消費者の心を捉えています。世界には、1回の投稿あたり数千万円稼ぐとも言われるセレブもいるんですね。信頼の目安となっているフォロワー数。実は、その「水増し」が横行しています。

ネット広告の闇 水増しインフルエンサー

今月(5月)初め、インスタなど、SNSのフォロワーを販売する業者が取材に応じました。
フォロワー販売業者
「注文数としては、1日に100(件)以上はあって、高くて、1人あたり6.5円ですね。」

取材班
「例えば1,000人の(フォロワーを)いま付けていただくことはできますか?」
フォロワー販売業者
「簡単に出来ますね。すぐに納品できるやつを選んで、じゃあ、1,000人。」

取材班
「もう付きましたね。10秒たたずに、フォロワーがいま、77人ですね。どんどん増えていきますね。149人。こんなに早いんですね。いま、1,000人超えましたね。6分ほどで。」
罪悪感はないのか聞くと…。
フォロワー販売業者
「自分たちは法律を害していないわけだし、使うか使わないかは利用者の判断ですし、需要があって、うちはやっています。」

実際にフォロワーを買ったインフルエンサーが、買う理由を明かしました。人気モデル似の30代の主婦。フォロワー数はおよそ1万5,000人です。
30代 主婦
「1000人ちょっとだけ、1回フォロワーを買ったことがあります。1万人超えると機能的に使えるものがあって、そのほうが圧倒的に見に来てくれる人が増えるというのがあって、大台(1万)に乗せるときだけ利用したことがあります。」

投稿するのは、主に化粧品の話題。広告主のメーカーから、多い時で月20万円報酬を得ているといいます。
30代 主婦
「お小遣いのプラスにしようかなくらいはいただけます。別に、いま(フォロワー)買うの普通だよって言ったらおかしいですけど。」

高山:僕インスタやらないんですよね。なので、インスタ、利用規約。どんなルールがあるんだろう。利用者による誓約、このあたりですかね。ご自身のアカウント(ユーザーネームを含む)の一部分の購入、販売または使用を試みることは禁止されています。なるほど。今回は番組で検証するために、フォロワーの購入やってみたいと思います。
フォロワー水増しの実態を解明するためあえて買ってみることに。
※法律では禁止されておらず、投稿もしていません。
高山:インスタグラムフォロワー1万人、税込み1万500円。送料無料でお届けしますってどういうこと?100人増加購入で980円。
3つのアカウントを作り、異なる3つの業者から1万人ずつフォロワーを購入。アカウント名は仮に、渋谷一郎、渋谷二郎、渋谷三郎としました。
※アカウントは、すでに削除しています。
高山:携帯がすごいことになっています。こんこんと湧くようにフォロワーが付き始めています。ちょっと怖いです。
購入から2日後。
高山:なかなか1万に届いていなかった最後の1業者が1万フォロワー達成いたしました。フォロワーにどんな人がいるのか見てみると、外国の人がとても多いですね。
購入したフォロワーはどんな人たちなのか。3万人の“フォロワー”を追跡調査することにしました。データ解析の結果、3つのアカウントで、それぞれ特徴が見つかりました。渋谷一郎のアカウントは、世界150か国からフォローされていることが判明。渋谷二郎アカウントは、95%が、なぜかブラジルという結果に。渋谷三郎アカウントは、多くが中東から。
日本人の何も投稿していないアカウントを、なぜ言語の異なる世界中の人々がフォローするのでしょうか。取材班は、渋谷二郎のフォロワーが集中したブラジル・サンパウロで、フォロワーたちへの接触を図りました。
取材班
「電話番号は存在しませんって。出ないですね。」
プロフィールに載っている連絡先はデタラメばかり…。
取材班
「私は日本のテレビ局の取材班です。」
僅かに実在するアカウントが判明しました。
取材班
「よかった。会ってくれそう。」
そこは、市内でも治安が悪いと言われるエリア。
取材班
「こっち?本当に?
デイジマさんの家はどこです?」
住民
「彼女の家はあそこだよ。」

昼なのに暗い廊下を行くと…。
取材班
「こんにちは。」
「どうぞ。」
渋谷二郎のフォロワーの1人は、夜間学校に通う、16歳のアガタさんでした。
母親が1本30円の自家製アイスを作って生計を立てる一家。アガタさんは、そのアイスを宣伝しようと、インスタのアカウントを作ったといいます。
取材班
「渋谷二郎のアカウントをフォローした覚えはありますか?」
アガタさん
「いいえ。なにが起きたか、正直わかりません。間違っているわ、こんなこと。だって友達以外、誰もフォローしたことないんだもの。」

母親
「危ないし、怖いわ。」

次に向かったのは、海沿いの町。ブラジルのフォロワー2人目を訪ねると…。
来店客
「あまり切らなくていいよ。」

チアゴさん
「坊主頭にならないくらいだろ。」

34歳の理容師、チアゴさんです。
取材班
「渋谷二郎というアカウントをフォローしたことは?」
チアゴさん
「いや、そんな覚えはないよ。SHIBUYA…、確かにフォローしてる…。変だな…。」

アカウントが、フォロワーの水増しに利用されている可能性について伝えると…。
チアゴさん
「許せない。勝手に俺のアカウントで知らない誰かが金もうけしているなんて許せない。俺には何の得もないんだろ?」

取材班はさらに、アガタさんやチアゴさんたちが、渋谷二郎のほかに誰をフォローしているのか調べました。すると、本人たちには覚えがないにもかかわらず、100人近くの日本人アカウントをフォローしていました。

一体、どういうカラクリなのか?

ゲスト 石井光太さん(作家)
ゲスト 宮田裕章さん(慶應義塾大学教授)
武田:地球の裏側までつながるとは驚きでした。この売買されているフォロワーは何なんですか?
高山:3万人を調べると、2つの傾向が見えてきたんです。「のっとり」と「架空」。「のっとり」をされているのは、ブラジルを中心としたアカウントです。実在する人物のアカウントが盗まれた可能性があるということが分かってきました。
武田:それは、パスワードか何かを盗まれたということですか?
高山:そうなんです。
それから「架空」とされるのは、中東を中心としたアカウントです。よく見るとIDが連番だったり、投稿が同じ写真だったり、業者が居もしない人物のアカウントを勝手に作った、いわゆる「ボット」というものであろうという見方が出てきたんです。こういったものが、お金を払った人たちに大量に届けられている現実が見えてきました。
武田:海外の貧困地域の取材をされてきた石井さん。今回はブラジルにも追加で電話取材をされたそうですけれど、どんなことを言っていましたか?
石井さん:まず、ブラジルの人たちは、小学校1、2年生ぐらいから携帯電話を持ってSNSをするそうです。治安の悪い所に住んでいたりすると、親が早いうちから子どもに携帯電話を渡して安全を守るという習慣があるんです。子どもたちは、すぐにSNSに登録をしてフォロワーを増やしたい、そういうのはやっているんです。なぜ、その彼らがSNSを使うかというと、VTRにあったように、アイスクリームを売って少しでもお金を稼ぎたいとか、昔はサッカーで一躍有名になりたいというのがありましたけれど、今はインフルエンサーになってお金を稼ぎたいという夢を持っているんです。それが貧困から抜け出す夢になっているんです。彼らは、そう思ってSNSをやっているんですが、日本人がそれを搾取する、あるいはその夢を食いつぶすような形で現金に換えてしまっている。そこに、ものすごい不自然さというか怖さを感じるなと思っています。
武田:取材に当たった藤目記者、インフルエンサーは、なぜ、そこまでしてフォロワーを増やさなければいけないんですか?
藤目琴実記者(ネットワーク報道部):多くのインフルエンサーは、水増しすることなく、実際の自分の投稿でフォロワーを増やしているわけなんですが、フォロワー数によって仕事の依頼、それから報酬が変わってくるというのは同じです。例えば、同じ1つの投稿でも、フォロワーが1万人の方と5万人の方だったら報酬に差が出てくるんです。実際にフォロワーを購入したインフルエンサーの方に聞きますと、「フォロワーの購入費は、仕事をもらうための登録料のようなものだ」「罪悪感は全くない」と話していました。彼女たちとしても、投稿の中身で頑張っても、数で判断されてしまう苦しさもあるのだと感じました。
武田:「勝手に自分のアカウントでもうけているのが許せない」と、ブラジルの方の声がありましたけれども、フォロワーの売買で具体的にどんな被害が広がっているんでしょうか?
藤目記者:こちらをご覧ください。まず、第一の被害者は、インスタグラムを信頼しているユーザーだと思います。そして、そのインフルエンサーにお金を出している広告主の企業も被害者と言えます。
SNSは本来、人と人を結ぶ信頼に基づいたコミュニティーで、だからこそ、そこに企業が注目して、広告宣伝の場となっているわけですが、フォロワーの水増しという嘘が混じることによって、ここにいる皆がだまされているという状態なんです。
武田:SNSを運営する企業の姿勢にも課題があるのではないかとも思うんですが、宮田さんはどうご覧になりますか?
宮田さん:世界を席けんする「GAFA」と呼ばれるこの4社の中で、今回取り上げたインスタグラムを傘下に治めるフェイスブックとグーグルは、この広告を主な収入源にしています。ソーシャルメディアを活用した広告は、世界のビジネスモデルを激変させたんですが、これが登場したのはごく最近で、さまざまな課題が言われています。特にデータ、AIを活用して収益を上げることを優先する中で、フェイクニュースだったり、プライバシーの侵害の対策は不十分なのではないかということが言われています。先月(4月)、フェイスブックのCEO、マーク・ザッカーバーグが「プライバシー対策を事業戦略として最も重視する」という話をしているんですが、2日前にも流出のニュースがあったり、これからイタチごっこが続いていきます。我々も、無料でつながり、楽しさを得ている一方で、個人情報を企業に渡していると。その時に、プライバシーの侵害というのも1つの問題なんですが、気付かぬうちに不正な組織の信用に手を貸していたり、悪意の運び手になっているかもしれない。こういったことも注意する必要があるのかなと思います。
高山:視聴者の声をご紹介します。
20代の女性、もももももさん。「インフルエンサーの言葉には確かに説得力がある。経験に基づく言葉だから刺さるものがあるのも事実。でもフォロワーの数が多いのを利用して、もっぱら自分の宣伝しかしていない人に関しては若干疑いを持ったほうがいいと思います。その言葉を自分が信仰しだしたら危険信号。その言葉は本当に意図があるもの?ないもの?その裏に隠された意図や問題も見ないと私たちは情報に飲まれてしまう」。
武田:既存の広告よりも、口コミとかインフルエンサーの言うことを信頼するという社会の変化もあるんですね。
石井さん:インフルエンサーには2つ種類があると思います。本でいうと、以前は、プロの書評家と、街の口コミで井戸端会議の中に「あの本、いいよ」と薦めたりする人がいる。この井戸端会議にお金を広告会社が投入することによって、彼らのセーブが効かなくなってしまったのが一番の問題なんじゃないかなと思っています。
武田:一方で、今、既存のメディアに対する不信もあるんでしょうか?
石井さん:あるでしょうね。だから、逆に反動でそれはできたんですけれども、まだまだ、そこがきちんと安定しないのかなという印象です。
高山:今度は、渋谷一郎のアカウントをご覧いただきたいんですが、こちらには1万人中150人の日本人フォロワーが確認されました。このうち、連絡が取れた50人と向き合ううちに、ひと事とは思えない、ある事実が浮かび上がってきたんです。
日本人フォロワーの中に、都内の洋菓子店のアカウントがありました。渋谷一郎をフォローした理由を聞くため、店を訪ねます。
高山:インスタグラムで、ここにたどりついたんですけど、こちらのお店で間違いないですよね?
実は私インスタをこの間始めたんですけど、何も投稿していないんですけど、こちらのお店から急にフォローしていただいたんですよ。
「そうでしたか。」
突然の話に驚いた様子でしたが、気になることがあるといいます。
「飛び込み(の営業)で『フォロワー数に悩んでませんか?』ということで。」
見せてくれたチラシは、毎日のようにやって来るPR業者から渡されたもの。
2年前に店を開き、インスタを始めたばかりだった夫婦。フォロワー数を増やして集客をアップするというこのサービスを試してみることにしたといいます。
「最初は(フォロワー)増えると、お客さんが興味をもってくれてると思ったけど。」
「関係のない人、外国の方が多いので、もういいかなと。」
すぐに契約を解除。フォロワーの増加は止まりました。しかし、今度は店のアカウントが、勝手に知らない人をフォローしていることを発見。夫婦は日々、大量のフォロー外しに追われ、困っていました。
「気持ち悪いのもあるんですけど、怖さはありますね。」
取材班がこのPR業者に確認すると、「契約解除後のフォローについては関わっていない」と答えました。フォローの経緯は不明のまま。次に見つけたのは、都内にあるという沖縄料理店のアカウント。
高山:ここのはずなんですけど、沖縄料理屋さんじゃないですね。
高山:場所探していて、沖縄料理屋さんって。
店員
「あったんだけど、やめちゃった。」

高山:そうなんですか!?
近所の人によると、その店は確かにこの場所にありましたが、およそ1年前に閉店していました。一郎アカウントは、すでに存在しない店からフォローされていたのです。
真相に迫る手がかりはないのか。取材班は、連絡先が判明している日本人フォロワー50人全てに取材を行いました。すると共通点が浮かび上がってきました。
“あるパソコンのソフトを使った”
詳しく話が聞けたフォロワーのほとんどが、そう話したのです。それは、海外の無料ソフト。
インスタは、スマホからしか投稿できませんが、これを使うと、パソコンから写真を投稿でき、写真の加工もやりやすいとして、日本でも利用が広がっています。英語の利用規約を読むと、「あなたのアカウントで他人をフォローする場合があります」。
勝手にフォローが増える原因の一つが、この無料ソフトにある可能性が見えてきました。先ほどの洋菓子店を再び訪ね、そのことを伝えると…。
「あー!入ってます。これですよね?」
例のソフトがそこに。果たしてこれが原因なのでしょうか?
高山:「フォローが勝手に増えていった」とおっしゃる方のほぼ全員が海外製と思われる無料のソフトをインストールして使っていたということが分かりました。このソフトの供給元に問い合わせをしたんですが、残念ながら、本日までに裏付けは取ることができませんでした。なので、このソフトが原因となって、フォロワーを勝手に増やしているとは言い切ることはできません。ただ、このソフトを利用していた皆さんに共通点がありまして、「利用規約を知らない」「見落としていた」という方ばかりだったんです。
武田:なかなか読まないですよね。
高山:そうなんですよね。利用規約って、なかなか隅から隅まで読む方は少ないと思うんですが、ネットのセキュリティーに詳しい、トレンドマイクロの岡本さんによると、「自分のIDとパスワードが求められている場合には、利用も含めて、慎重に検討したほうがよい」というふうにおっしゃっていました。
藤目記者:実は、水増しに使われていたアカウントの中には、行政のものも見つかりました。こちらの4つの地方自治体なんですが、このうち2つの自治体は同じソフトを使用していました。さらに1つの自治体もその可能性があるということを認めていまして、いずれの自治体も、私たちの取材を受けて、アカウントの削除ですとか、パスワードの変更といった対応を取りました。
一方、インスタグラムの運営元のフェイスブック社の見解がこちらです。「フォロワーの販売、購入は禁止している。第三機関のサービスを使ってフォロワー増加を図るアカウントは今後、規制がかかる可能性がある」ということです。
高山:視聴者の声をご紹介します。
文蔵さん、60代の女性。「この頃の方は、ネットの怖さも拡散力の速さ、広さも実感していないのでしょう。ネットの進み方に人間の対応が追いつかないのでしょうか?」
トモさん、50代の男性。「便利さや娯楽性を強調するCMが氾濫し、簡単に扱えるがゆえに、考えなしに使う方が多々おられるが、ネットリテラシー教育にもっと力を入れて頂きたいですね」というご意見も頂きました。
武田:「フォロワーの水増しに罪悪感がない」というインフルエンサーの方の声がありましたけれども、発信することに恐れみたいなものを感じるべきだと思うんですが、石井さんはどう思いますか?
石井さん:番組では、日本人が被害者になっているという視点ですが、例えばあのソフトを使った時点で、日本人が海外のサイトとかSNSに自動的に「いいね」をしている可能性も出てくるんです。中東には、ISというテログループがあります。このテログループは、SNSを使って資金集めをしたり、兵隊を集めたり、宣伝をしたりしています。そこに対して、知らない間に「いいね」をしている可能性がある。ブラジルであれば、SNSを使って誘拐する相手を探したり、ひったくりをする相手を探したりしている。そういった組織に対して「いいね」をしてしまうこともある。そういったものすごい危険をはらんでいるんですね。今、フェイスブックにしても、いろんな規約の中で、違法なことをしていないというふうに言いますけれども、これは放っといていい問題ではなくて、インターネットを使う、あるいはSNSを使う人間の責任として、そこまで考えた上でいろいろ行動していかなければいけないのではないかと思っています。
武田:そういう部分も含めたネットリテラシーは、まだまだ足りないんですか?
宮田さん:おっしゃる通りだと思います。我々、使う側も、情報を発信する側も、フォロワーの数だけではなくて、やはり正しい情報を発信できているかといった軸を考えていかなくてはいけないかなと思います。
武田:フォロワーの水増しを見破ることは難しいんですか?
藤目記者:実は、見破る方法もいくつかあります。こちらは、フォロワー数の増減をグラフにしたものなんですが、急激に2回数が上がっていますよね。こういった不自然なグラフは購入が疑われます。
武田:これは何かで見ることができるんですか?
藤目記者:無料のサイトで見ることができます。こういったサービスがいくつかあります。
武田:これを見れば、そのアカウントがフォロワーの水増しをしているかどうかが分かると。
藤目記者:実際にフォロワーを購入していたインフルエンサーの方も、「企業やユーザーはきっと分かっている」と言っていたんですが、取材で出会った中高生はインスタグラムの中のキラキラした世界にすごく憧れを持って、実際に参考にもしているんですね。なので、インフルエンサーを名乗る以上は、ユーザーに対する責任があるなと、私も感じました。
武田:今年(2019年)は、ネット広告がテレビ広告を追い越すとまで言われています。そういった中で、ネットやSNSの広告は健全になっていかなければいけないと思うのですが、宮田さんは、今、何が必要だと考えますか?
宮田さん:今、データの世界では、大転換が起こり始めています。今まさに世界経済に影響を与えているものなんですが、これまで、国や企業といった主体がデータを持っていたんです。我々は限られたアクセス権を持つという状態だったんですが、EUが昨年(2018年)5月に施行した新しい規則によって、例えば個人によってデータがアクセスできる、あるいはデータをほかの場所に移動できる権利が規定されました。これは恐らく、いずれ21世紀の基本的人権になってくると思います。この原則が社会に浸透してくると何が起こるのかというと、先ほどのように、個人の知らないところでお金やデータが回っていたということがなかなか難しくなって、本人を軸にデータが活用されるので、信頼が得られないと難しくなるだろうと。私も1人の研究者として、今、KDDIと共同研究をしているんですが、例えば、これまでアルコール中毒の人に、アルコールを売れるからって見せてしまって、なかなか制御できなかったのが、これを止めることができるようになってきたと。健康、安心、持続可能な価値に貢献する中で、新しい信頼を作っていくことが、ビジネスにとって重要になるのかなと思います。

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